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トークンを用いた経済圏設計の基本的枠組

イントロダクション

トークンエコノミーやトークノミクスとはトークン(または暗号資産やステーブルコイン)を用いた経済圏のことを指す。トークノミクスは、デジタルアセットのエコシステム、ステーブルコイン、web3ゲームなどのプロダクトにおいて重要な役割を果たしている。

我々は、以下6つの論点がトークノミクスの設計において重要であると考える。

  01  web3プロジェクトにおけるトレジャリー(中央金庫の運用とユーザーへの分配メカニズムをどう設定すべきか
02マクロ経済指標を導入し、いかにしてサービス内の計測可能なKPIに落とし込んでいくか
トークン発行体を中央銀行に見立てた国家としての通貨発行・運営モデルを参考に、トークン全体の価格変動、ユーザー数の成長率、ユーザー全体の動向、各ユーザー層の割合といったトークノミクス全体に係る考え方
   03  上記2の「マクロ経済指標」の延長線において、閉鎖経済ではなく開放経済(IS-LM-BPモデルやそれに準ずるモデル)
前提のトークノミクス設計をどこまで行うことが可能か ゲームの中だけのトークンの動きだけではなく、外に持ち出されて換金されること、新規で外部からエコシステムに流入してくることなどを前提とした設計
  03前提のトークノミクス設計をどこまで行うことが可能か ゲームの中だけのトークンの動きだけではなく、外に持ち出されて換金されること、新規で外部からエコシステムに流入
04ミクロ経済指標を導入し、いかにしてサービス内の計測可能なKPIに落とし込んでいくか
ユーザーの利益確定・エコシステムからの離脱・再投資の選択、トークンの獲得方法・トークンのユーティリティ・バーン(焼却)メカニズム、NFTのユーティリティなど、局所的なトークノミクスの考え方
  05トークンのオンチェーンでの流動性をどのように広げていくか いかに健全な流動性を構築し、市場に対して透明性を持ちつつトークンの配布スケジュールやプロトコルの規模に応じたものにすべきか
  06トークンの価値の集約(Value Accrualをどう行うか トークンのエコシステムがユーザーを惹きつけ、長期にわたって需要を捕捉・維持することができるか

このホワイトペーパーでは上記の中から特に「マクロ経済指標」「オンチェーンの流動性」「トークンの価値の集約(Value Accrual)」に絞って考察していく。背景として現状のトークノミクスの考察では、個人のサービス内でのトークン消費に焦点を当てたミクロ経済的な視点が豊富に存在するが、マクロ経済的な視点からの考察はまだ十分でない状況である。トークンを発行するということは「通貨発行権の行使」と捉えることが可能であり、中央銀行のオペレーションモデルが参考になる。したがって、関連するマクロ経済の視点でトークノミクスを分析することは大きな意義があると考える。本稿では、マクロ経済の考え方を踏まえつつ、トークノミクス設計の重要性を探っていく。

なお、筆者は経済学の専門家ではなく、あくまで試みとしてこの考察を書いている。専門的観点によって解釈が異なる可能性がある事をご了承いただき、各専門家の考察もご指摘いただきたい。
また、前提として「完璧なトークノミクス」の設計は難しいかもしれないが、サービスやコンテンツの足を引っ張らない最低限の設計は可能であり、最大限の努力をすべきである。

マクロ経済観点でのトークノミクス設計

マクロ経済とミクロ経済の関係性

経済学では、経済を「マクロ経済」と「ミクロ経済」の2つの異なる視点から経済現象を分析する。

図1:マクロ経済とミクロ経済の比較

マクロ経済ミクロ経済
分析の出発点集計された経済主体個々の経済主体
主な分析対象集計された市場における集計量の決定・所得決定個々の市場における経済主体の行動・価格決定
経済の主な調整メカニズム集計された市場における需給調整、政府による調整個々の市場における価格調整

マクロ経済は、経済全体を対象として、国家や地域の経済活動を総合的に捉える分野である。マクロ経済では、国内総生産(GDP)、インフレ率、失業率、財政政策、金融政策などの経済全体のパフォーマンスや安定性を評価するための指標や政策を扱い、経済成長、景気循環、所得分配、国際収支などの概念を用いて、経済の動きを理解するものである。

一方、ミクロ経済は、個々の経済主体(家計、企業、政府など)の行動や意思決定を対象とし、それらが市場や価格に与える影響を分析する分野である。ミクロ経済では、消費者の選択、生産者のコストと生産量、市場の需給、価格決定、市場構造(完全競争、独占、寡占など)などが主要なトピックである。ミクロ経済学は、個々の経済主体がどのようにリソースを最適に配分し、効率的な市場を形成するかを研究している。

要するに、マクロ経済は経済全体の視点から、ミクロ経済は個々の経済主体の視点から、それぞれ経済現象を分析し理解しようとするものである。両者は相互に影響し合い、経済学の理解や政策立案において重要な役割を果たしている。

この原則をトークノミクスに当てはめると、マクロ経済がトークン全体の価格変動、ユーザー数の成長率、ユーザー全体の動向、スカラーシップの割合など、トークノミクス全体に係る考えであり、ミクロ経済がユーザーの利確・再投資の選択、トークンの稼ぎ方・使い道・バーン(焼却)メカニズム、NFTのユーティリティなど、局所的なトークノミクスに係る考えと位置付けた。

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トークンを用いた経済圏設計の基本的枠組