web3プロジェクトを成功させるための要素について、様々な観点での議論や意見が飛び交っていますが、今回は特に重要と位置付けられているオンチェーンの流動性について書き述べていきます。

オンチェーンの流動性はweb3のプロダクトにおいて根幹の要素であるのにも関わらず、現時点では大きく問題提起されていない状況です。

本記事ではそのような状況に警鐘を鳴らす意味も込めて、改めて流動性の重要性とその高め方についてご提案します。

なお、本記事はオンチェーンの流動性のみに焦点を置いており、CEXの流動性は簡単に偽造でき(FTX・見せ板・MMなど)、中央集権的な懸念があることは考慮の対象とはしておりません。

流動性を考える上で重要な数値とは?

オンチェーンの流動性について考えるにあたり、重要な数値があります。Max Treasury Valueです。

Max Treasury Valueとは、すべての既知の流動性プールから抽出できる流動性の総量を意味します。言い換えれば、あるプロジェクトがMarket Capの全量(利用可能なすべてのトークン)を清算しようとした場合、BTC、ETH、BNBなどの資産でどれだけの価値を引き出すことができるかということです。弊社DeFimansでは、この値をプロジェクトの財務の健全性と持続可能性を評価するための重要な指標と見なしています。

すなわち、Max Treasury Valueが高ければ流動性の観点からそのプロジェクトは健全であると言えます。

流動性の健全性(Liquidity Health)とは

流動性の健全性は、トークンが成功する上で重要な要素です。

ここで一度、流動性とその健全性について言葉の意味(解釈)を整理します。

流動性の健全性:流動性の深さと時価総額(Market Cap)の比率

流動性:トークンの価格に影響を与えることなく、トークンを他のデジタル資産に変換することの容易さ

MarketCapに対する深い流動性が重要な理由

次に、なぜMarketCapに対する深い流動性が重要なのかについて、2つの観点から解説します。

新規購入者の獲得

オンチェーンの流動性が低いと、価格への影響やスリッページが加速するため、既存および将来のサポーターは購入を強く控えることになります。

これは市場参加者の購買意欲を削ぎ、成長に水を差す結果をもたらします。

売り逃げからの保護

オンチェーンの流動性が低いと、価格インパクトやスリッページが加速度的に大きくなるため、売り手はより早く売ることを促されます。

売り手がトークンを売れば売るほどトークン1枚あたりの売却額は小さくなるため、誰もが早くに売るインセンティブを持つ結果となります。

その結果、1回の中規模な売り崩しでさえトークン価格を暴落させ、トークンの強力な支持者でさえFUD(Fear, Uncertainty, Doubtの略)を引き起こし、価格がボトムに向かい続けるという不可逆的な死のスパイラルを引き起こす可能性があるのです。

総括すると、「良好な流動性」はプロジェクトを魅力的で、ベアマーケットから回復力のあるものにすることが出来ます。

当然のことながら、流動性の健全性が悪ければ、その反対の結果となります。

インフレ率に留意する必要性

本記事においてインフレ率は、発行体がトレジャリーから流通供給のために放出するトークンの枚数とその比率を指すこととします。

適切な成長(需要)を伴わずに流通量(供給)を急激に増加させると、トークンは暴落します。これは単純な需要と供給の経済学的問題です。

ベアマーケットでは、需要は非常に低いと考えて差し支えないので、供給を管理することは非常に重要になります。

リターンを求めずにトークンを使っているのであれば、それはトレジャリーを浪費し、トークンを無意味に希釈化させ、流通量を膨張させていることになります。

オンチェーンの流動性を高める具体的方法

オンチェーンの流動性はプロジェクトの健全性を市場に向けて透明性を持ってアピールすることが出来る上、客観的な証明が出来るため将来的にも非常に有効な指標となります。

オンチェーンの流動性はトークンのユーティリティ拡張や他プロジェクトとのパートナーシップに伴うインテグレーションによって高めることが出来ます。

他のプロジェクトがインテグレーションに応じてくれるよう、プロジェクトとしての評価及びトークンそれ自体の評価を大事にしていかなければなりません。

提携候補先のdocsを読み込み、個別にカスタマイズした独自の提案を持ち込むことでエコシステムの一員となり、所属するオンチェーンエコシステムを可能な限り増加させましょう。

win-winな関係となれるよう、双方のインセンティブをアラインさせることも重要になります。

流動性の健全性の低下がもたらすリスク

あるべき姿を鑑みても、現在のオンチェーンの流動性の健全性は危険なほど低いケースが多く見られます。

その結果、価格とLP値は市場の不利な出来事に過度にさらされています。スリッページが高いため、新規の支持者が減り、需要が鈍り、成長が妨げられます。

同時に、売り手はより早く売るように促されます。これはアービトラージ取引によって、当然偽装可能なCEXへの流動性にも悪影響を及ぼします。

初期投資家からの中規模な売り越しが1回でもあれば、トークン価格は暴落し、ホルダーやコミュニティを失望させ、デス・スパイラルを引き起こさないよう、流動性を健全に保つ必要性があると言えるでしょう。

流動性の健全性はスタートライン

流動性の健全性を改善することで、プロジェクトは価格の安定と上昇を促進し、同時にマイナスの影響に対してより強くなります。

特に、初期~中期段階のプロジェクトは、外部から流動性を借り入れるのではなく流動性を所有(Protocol Owned Liquidity)している状態が望ましいです。

これは、持続可能な方法(非排出依存)で流動性の健全性を向上させるための、堅実で良いスタートラインであると考えられます。

結論として以下の点を強調いたします。

  • 流動性プールをできるだけ深く保つこと(±2% depth)
  • 流動性をできるだけ集中させておくこと(Concentrated Liquidity)

現状、上記を同時に実現しているプロダクトは例としてUniswap v3やUniswap v4が挙げられます。トークン経済圏を構築する際には是非一度ご参考下さい。

DeFimansでは、トークノミクスの設計やトレジャリーの運用に関するご相談を承っております。トークン発行や活用を検討されている事業者様はぜひご相談ください。