web3業界における保険の必要性
web3の台頭は、分散型金融(DeFi)をはじめとする金融セクターに革新的な変化をもたらしました。これにより、伝統的な金融システムでは考慮されなかった新たなリスクが伴います。これらのリスクに対応するためにNexus Mutualのような新しい形態の保険サービスが登場し、保険業界に新たな動きを見せています。
この記事では、web3業界でなぜ保険が必要なのか、そしてそれが今後どのように発展していくのかについて詳しく掘り下げていきます。
目次
DeFi(分散型金融)の概要
DeFi(分散型金融)は、ブロックチェーン技術を活用して中央集権的な金融機関を介さずに行われる金融活動のことです。DeFiは、貸借り、取引、投資などを可能にするスマートコントラクトによって支えられています。しかし、これはスマートコントラクトの脆弱性や市場の変動性など、独自のリスクをもたらします。
web3における保険サービスについて
従来の保険の仕組みとは
従来の保険とは、リスクに直面している個人や企業が、予期しない損失やダメージから自身を守るために利用する金融商品です。保険契約者は保険会社に対して定期的に保険料を支払い、その見返りとして、契約に基づいて定義された特定のリスク(事故、病気、死亡など)が発生した場合に保険金を受け取る権利を得ます。このプロセスは中央集権的な保険会社によって運営され、リスクは多数の保険加入者間で分散されます。
新規リスクの出現
web3およびDeFiの世界では、ユーザーの資産を保護するために従来とは異なるアプローチが求められます。例えば、DeFiプラットフォームやその他のweb3アプリケーションは、常にハッキングや不具合による資産の損失リスクにさらされています。このようなリスクに対応するために、Nexus MutualなどのDeFi保険プロジェクトが登場しました。
DeFi保険の特徴
DeFi保険の特徴としては主に以下が挙げられます。
スマートコントラクトのリスク補償:ハッキングによる損失をカバーします。
柔軟な保険ルール:プロジェクトによって保険の条件が異なり、多くはオフチェーンでの審査が行われます。
オンチェーンでの支払い判定:一部ではトークン価格を基に支払いが決定されます。
Peer to Poolモデル:保険購入者とUnderwriterが共にユーザーとなるシステムです。
市場はまだ発展途上であり、プレミアムの算出方法や適切なカバレッジ範囲の確立など、解決すべき課題は多く存在します。
web3における保険市場の現状と課題
そもそも自ら好んで保険料を支払いたい人は存在しません。一般的に保険料はリスクをカバーするために仕方なく支払うものです。この点は、DeFiの世界でも変わりません。しかし、DeFiにおける保険の文脈では、さらに特有な課題があります。
例えば、既存のDeFi保険は主にユーザーの資産保護に焦点を当てています。しかしDeFiを運用するユーザーは伝統的な金融(TradFi)を運用するユーザーよりも高いリスクを受け入れる傾向にあり、彼らは、高いリターンを追求する一方で、それに伴うリスクも理解しています。つまり、元々リスクを受け入れることに抵抗が少ないため、保険料を支払ってまで追加のリスク管理を行おうとは思わない可能性があります。この状況を打開するためには、保険が提供するリスクリターンが非常に魅力的である必要があります。
また、セキュリティの脆弱性を見つけ出すBug bountyは高額な費用がかかりますし、保険プールが巨大なリスクを完全にカバーするには限界があります。特に大きな資産を持つ機関投資家などは、より大きな保護が必要ですが、これには保険プールを相当に拡大させる必要があります。しかし、プールを拡大するための報酬システムは、長期的には持続可能かどうかが問われるところです。
Value at Risk(VaR)の算出が困難
VaRとは、特定の期間内における損失リスクの最大値を予測する金融指標です。しかしweb3の世界では、価格の変動性が高いことや十分な歴史的データがないことから、VaRの正確な算出が困難です。これは保険料をどう設定するかという点で、DeFi保険にとって大きな課題となっています。
web3業界における保険の展望
web3業界が発展していくにつれて保険の需要は増々高まると予測されます。
確かにweb3の原則では資産管理もすべて自己責任ですが、これ故にハッキングや詐欺が横行し、万人の万人に対する闘争状態となっています。このような闘争状態を避けたいが故に人類は為政者と社会契約を結んできました。社会契約を結ぶか否かの選択をする自由があればweb3的と言えるのではないでしょうか?
最後に
web3領域へのカバレッジを提供することにより、ユーザーは安心して参入可能となると同時に、プロジェクトも保険提供を受けることでより革新的なものが生まれる土壌を醸成することが可能となります。業界の発展には攻めのソリューションのみならず、守りのソリューションが不可欠ですし、その中でも保険は常に重要な役割を果たします。
DeFi領域の保険はDeFi市場に存在していましたが、web3領域のプレイヤー全般をカバーする保険は現状存在しておりません。GameFiやLayer1&2といったDeFi保険ではカバーしきれていない領域に加え、DeFi保険プレイヤーが進出出来ていなかった領域を開拓することが可能となるのではないでしょうか。
DeFimansでは、web3やブロックチェーン技術の活用に関するご相談を承っております。本記事で解説したDeFi保険やweb3領域での保険に関するお悩みや、それらの応用に関してご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。