弊社共同代表の佐藤 太思は、2024年12月度Web3BB2日目の「分散化金融システムとステーブルコインの重要性」パネルに登壇し、既存金融での勤務経験とweb3に関わる知識の両観点から対談させていただきました。

パネルには、業界に精通したweb3のプロフェッショナルがずらりと並んでおり、ディスカッションテーマであるステーブルコインに対し、既存金融との融合や法規制の動向についてお話されました。

目次

登壇者一覧(敬称略)

岡部 典孝(代表取締役CEO, JPYC株式会社)
佐藤 太思[M](共同代表, 株式会社DeFimans)

セッションコンテンツ

Q1 
佐藤 [M]:分散化金融システムとステーブルコインについて、現在、日本の法整備が整ってきているということで、様々なステーブルコインが誕生しようとしています。その中でJPYCはどういう立ち位置で、どういう形でPMF(プロダクトマーケットフィット)を狙っているのか、ずばりお聞かせいただければと思います。

岡部:これまでJPYCは、プリペイド、すなわち前払式支払手段のライセンスで2021年の1月から約3年間 発行してきました。既に24億円ほど発行しましたが、2023年6月に改正法が施行されて、まさにそこから新しいJPYCを出していこうという準備をしているところです。

資金移動からステーブルコイン同士の仲介・信託型のステーブルコインなど、ステーブルコインに関することは基本的に全部やると思っていただければと思います。

佐藤:JPYCについて、現在は主にブロックチェーン上だとポリゴンにて流通しているかと思いますが、流動性をどのようにして増やし、ピュアなブロックチェーンユーザーに届けていくのでしょうか。

岡部:銀行型のステーブルコインは、現行の規制ではパブリックチェーンでは出せませんが、今後信託型のステーブルコインも含め、パブリックチェーンに出てくる可能性は十分にあると思っています。それがイーサリアムになるのか他のチェーンになるのかは不明ですが、JPYCは現在ポリゴンが大半なので、引き続きこちらには対応していきたいと思っています。

先日ユーザーにアンケートを取ったところ、BNBチェーンや非EVMのソラナにもニーズがあることが分かりました。この辺りは今後動向を探っていこうと思っています。

Q2 
佐藤 [M]:こういった金融取引を扱うとなると、どうしてもマネーロンダリングという論点が付きまといますが、JPYCとして、AML(マネー・ローンダリング防止対策)に対しどのようなお取組みをされているのでしょうか?

岡部:JPYCのもう1つの特徴として、基本的に「カストディーを行わない」ということを宣言しています。JPYCはメタマスク等のセルフウォレットに入っていることを想定していて、ユーザー間のやり取りを追える一方で、それを完全に止めることは難しいのが現状です。ブラックリストという取引を停止する機能があるので、明らかなマネーロンダリングは防げます。

最近サイバー防衛の取り組みとして発表させていただきましたが、これまでは、不正な情報があった際にブラックリストに追加して止めるということしか行っていませんでした。 ですが、それだと、手元で防止できても、他のところで防げない可能性があるんですね。そこで、「我々から攻撃する」ことを宣言しソウルバウンドトークンという、譲渡が難しいNFTをお札のようにテロリストのアドレスに貼っていくという取り組みを始めました。

佐藤:なるほど。マニュアルでトランザクションをブロックしていくのは、結局モグラ叩きになってしまうので、今仰っられたSBT(ソウルバウンドトークン)を使って、ステーブルコインの発行体から攻撃を仕掛けていくのは、すごく斬新且つ非常に有効な手段だと感じました。

Q3 
佐藤 [M]:ステーブルコインは、銀行の様な従来型の金融とどう異なり、今後どのようなユースケースを見出していけるのでしょうか。

岡部:SWIFTのような既存金融側も新しくなろうとしている一方で、情報を閉じたところに隠しておくと、悪い情報も隠されてしまうという根本的な性質に欠陥があると思っています。それがブロックチェーンの場合は、パブリックチェーンでみんな情報をオープンにすることによって、国境や業種も跨いで不正の摘発ができるようになります。これはSWIFTなどと比べた際のステーブルコインの強みだと思っています。

Q4 
佐藤 [M]:DeFiが24時間365日動くことによる影響を最も大きく受けるのはFXの領域だと思っていますが、いわゆるオンチェーンFXによって、業界全体にどのような作用が働くか、プラスの面、マイナスの面を教えてください。

岡部:FXに関しては、現状非常に大きな流動性があって、web3やステーブルコインが多少頑張った程度では、流動性は既存のFXの方が圧倒的に大きいと思ってます。 初期段階は、オンチェーンFXは既存のFXよりも手数料が高いので、従来のFXは使われ続けると思います。一般の方が使い始めるのは、ステーブルコインの流動性が何十兆という規模になってからだと考えています。

JPYC的には、もう少し先の話かもしれませんが、ステーブルコインも証券化して、証券のライセンスでFXで扱うということも理論的にはできる規定になっています。そうすると、例えばJPYC/USDCのレバレッジ取引が証券会社でできる未来もあり得るかもしれません。

外貨両替に関しては割とすぐに置き換えられるのではという手応えがありますね。外貨両替は利息は高いですが、往復で2, 3円手数料がかかるので、手数料の安いステーブルコインに割とスムーズに変わっていくのかもしれません。

佐藤:そうですね。特に空港の外貨両替のレートはたまったもんじゃない。(苦笑)この辺りは個人的にもすぐに変わってほしいなという思いはあります。

直近、アメリカの代表企業の一つであるPayPalがPYUSDを発行されましたが、今後JPYCの展開していく中で、オフチェーン的な既存ビジネスとの融合と、オンチェーン的な側面のどちらを優先していくか、などはお考えですか?

岡部:これは恐らく平行で動いてくるのだろうと思っています。我々も、例えばJPYCをたくさん持ってる方に特定のNFTをお渡しして、持っていると色々と良いサービスが受けられます、といったオンオフ融合のようなインセンティブを提供していきたいと思っています。

Q5 
佐藤 [M]:特に信託型のステーブルコインは中央集権制が否めませんが、これらがイーサリアムやソラナのようなブロックチェーン上に広まっていくためにはどのようなステップが必要でしょうか。

岡部:日本の規制では、中央集権的なステーブルコインではないと取り扱えないという規定になっています。既存の金融機関は全て中央集権型なので、それらを使っていた人が、クリプトの世界に出入りする時に、中央集権的なステーブルコインの発行体や仲介業者がまさにその接点になると思っています。なので、可能な限り使いやすくして、多くの方が離脱しないで「クリプトの世界に出入りできる」、そんな世界を我々がいち早く作っていかなければならない。そう思っています。

佐藤:ありがとうございます。その辺りで果たすべき役割というものが非常に重要になってくると思います。現状、既存金融と分散型金融が分断されてしまっていると考えていますが、この分断の部分に対して、ステーブルコインの発行体としてどのように解決していくのか、ご意見をお伺いできればと思います。

岡部:金融庁がまさに分散型金融の研究会でその辺りについてディスカッションをしています。DeFiに関する規制も今後各国で定まっていくのだろうと思います。

基本的には、ステーブルコインの発行体として我々がKYCDeFiをやることによってその接点をまず創り出し、完全なDeFiに行きたい方は、USDCなどを使って、いつでも行ったり来たりできる世界を保障することが大事だと思っています。我々がハブとして頑張っていくので、ぜひ引き続き応援よろしくお願いいたします!

ーーーーーーーーー

今回のセッションでは、ステーブルコインに関する法規制や流通に関する動向をディスカッションしました。ステーブルコインは中央集権的とも分散型とも捉えることができ、今後既存の枠組みとweb3の架け橋となることが期待されます。

ブロックチェーンや、その他web3事業についてお悩みのある方はぜひDeFimansへご相談下さい!

文:櫻井